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看護師の仕事はいのちを守る最前線の砦

 全日本民医連は、第8回看護介護活動交流集会を9月29~30日、千葉幕張メッセ国際会議場で開催しました。メインテーマは「いかそう憲法!語ろう 輝く看護・介護の実践。学ぼう いのちの平等つらぬく 民医連の歴史」。1235名が参加しました。記念講演は5月に和歌山においで頂いた澤地久枝さんでした。「看護師の仕事はいのちを守る最前線の砦」と題された講演内容を民医連新聞から転載させて頂きます。紙面をクリックしてください。
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 戦後の日本は、憲法で平和国家、文化国家、福祉国家であることを誇りとして掲げました。しかし、それはいまや風前の灯火です。発足した安倍内閣は、五年という年限を切って、「憲法を変える」と言いました。また防衛庁長官は、省への昇格の意欲をはっきりと示しました。
 この六十余年間、日本では公式な戦死者は一人も出ていません。それは、世界中で日本による戦死者も一人もいないということです。憲法九条の意味はここにあります。もちろ
ん批判はあります。沖縄を拠点にして、ベトナムヘ爆撃が行われ、多くの市民が殺傷されました。その責任は私たちにあります。イラクに自衛隊が出て行くことも防げなかった。
航空自衛隊はまだ、イラクで米軍の支援中です。犠牲者の出ることを私は恐れています。
 アメリカがはじめた戦争は、大義名分のなかったことがはっきりしました。イラク攻撃は侵略であり、自衛隊はその一翼を担っています。今まさに平和国家としての日本が危うくなっています。アメリカは、この次にイラン、北朝鮮に戦争をしかける危険があります。私は、「九条の会」の呼びかけ人の一人です。武力や軍隊を持つことや国の交戦権を捨てた、世界で初めての理想の憲法です。まだ生きています。文化国家のはずなのに、文化や教育の予算が削減されています。学費がどんどん上がり、親たちが借金をして子どもを大学にやるというのはおかしいですよね。教育の自由は、憲法によって保障されており、義務教育は無償であるとも書いてあります。しかし今、小学校で給食費が払えない子どもが増えています。そのことをていねいに報じる新聞はほとんどありません。マスコミは腰が引けています。識字率が高いことを誇った日本が、いまや文化国家であることを投げ捨てようとしています。

たたかいに誇りをもって
 この国は福祉国家であることも捨てようとしています。今年9月、東京大学名誉教授の多田富雄さんが、朝日新聞に投稿しました。「4月から実施されたリハビリ制限は、患者一人ひとりの病態を無視した乱暴な改定。リハビリが続けられず、寝たきりになる恐れのある患者はリハビリ難民になる」と。多田さんは半身麻際と言語障害があり、リハビリを続けながら発言を続けています。しかし、多田さんのような人も見捨てられる患者の一人です。
 私は二八歳の時に最初の心臓手術を受け、その後も何度も入院生活を経験したベテラン患者です。腰椎圧迫骨折で動けず、寝たきり老人のリハーサルもしました。
 医療の中心はお医者さんです。でも看護師さんたちが朝、病室に来る時に「おはよう」と明るい声で入ってくるか黙っているかでは、ずいぶん違うことをしみじみ惑じました。夜に何台もの救急車が入ってきて寝てない、どっちが患者か分からないような顔でも陽気にふるまい、引き継ぎが終わるまで休むこともできない。これでは恋をする間も結婚して子どもを生み育てるゆとりもない。いのちにかかわる仕事をしている人たちが非人間的な人生を送るというのはおかしいことではないかと思います。 看護師がいかに激務か、責任が重くて労働条件も悪いか。給料も高くない。「人のため」と理想に燃えて看護師になっても、それだけでは続かない。もっと人員が増えれば、楽になるはずですよね。
 みなさんのお仕事は、いのちを守る最前線の砦です。その砦が崩れたら私たち患者のいのちもガタガタになります。大変な仕事、苦しい仕事に従事していることは、よく分かっているつもりです。「いのちを守るたたかい」、たたかいという言葉以外にありません。現在の政治状況にあきらめて腰を引くかどうか、心ある日本人は試されています。私たちではなく、これから生まれてくるいのち、世界のいのちにつながるいのちです。未来のため、私たちは試されています。
 本当に「いのちの砦」の仕事であることに誇りをもってください。さらに悪くなることに対して、医療界外の人だちといっしょにたたかって、よき状態を勝ちとっていかなければなりません。黙っていれば福祉を削って軍事費に回す、日本の政治は腐りきっています。私は医療についてまったくの素人ですが、みなさんに応援のエールを送ることができます。狂っている日本をいっしょに軌道修正していきたいと思います。
by tk-waseikyo | 2006-10-27 11:31 | 注目記事

北朝鮮ミサイル発射、どうみる?

国際社会は「9条」(対話による解決)を選択 「国際的には9条の勝利」
「9条の会」事務局長 小森陽一さんにきく(民医連新聞2006.8/7号)より
北朝鮮ミサイル発射、どうみる?
国際社会は「9条」(対話による解決)を選択
「9条の会」事務局長 小森陽一さんに聞く

 テポドン二号の発射で「北朝鮮が攻めてきたらどうする。九条を変えた方がいい」という声が強まったらどうしよう、と心配していませんか? 日本政府は恐怖と先制攻撃論で国民を煽(あお)りましたが、国際社会は冷静に対応しました。裏がわかれば事件は夏のオバケのようなもの。怖くはありません。「国際的には九条の勝利」という小森陽一さん(東大教授・九条の会事務局長)にインタビューしました。


ねらいは日本ではない


 大陸間弾道ミサイル「テポドン二号」がねらっているのは日本ではありません。普通のミサイルが一〇分で到着する日本は関係なく、ねらいは米国です。その理由は朝鮮戦争が終了していないからです(休戦中)。


 「テポドンパニック」を起こしたテポドン一号発射(一九九八年)も米国向けです。一九九四年の「北朝鮮危機」を米国はカーター元大統領の訪問で乗り切りました。その後の交渉で米国は、北朝鮮に核兵器につながる黒鉛減速炉を放棄させる代わり、平和利用の軽水炉を提供すると約束しました。しかしクリントン政権が約束を果たさなかったため、北朝鮮は威嚇(いかく)に出たのです。


 ブッシュ政権は交渉の席にも着きません。北朝鮮は「エネルギーを枯渇(こかつ)させ、政権を崩壊させようとしている」と、再び威嚇行為に出ました。米朝二カ国間の協議に持ち込み、交渉の「カード」にしたい。それがテポドン二号発射です。米国は、国家間の約束を反故(ほご)にし、北東アジアに危機をつくり、軍事介入を続け中国・ロシアを抑えたい。米国・北朝鮮がともに「武力による威嚇」を張り合っている状況です。


 だから「武力による威嚇」や、「武力の行使」によらず「国際紛争を解決する」という憲法九条は、両国に対し、もっとも現実的で合理的な解決策を示しています。


九条が勝った


 ところが日本政府は、九条とは逆のことをしました。即日、国連憲章七章にもとづく北朝鮮制裁決議案を提示したのです。七章は、経済制裁に次いで軍事制裁を可能にする規定です。この行為は九条に違反する、といってよい。


 しかし国連安保理は、軍事制裁ではなく、国際社会の総意で断固たる非難を示す決議を、全会一致で採択しました。これは国際社会が外交努力で到達した画期的なものです。北朝鮮を六カ国協議という対話の場に引き出し、交渉で対応していく上でも重要です。


 この決議採択は「憲法九条」の国際的な勝利といえます。中国もロシアも九条の精神を理解していたからだと思っています。「九条の会」が国際的に発信してきた運動の成果です。


 本来なら日本政府こそ、九条にもとづいて安保理決議のような案を出すべきでした。そうでなく、麻生外相はミサイル発射を「金正日に感謝しなければいけない」などと発言。額賀防衛庁長官、安倍官房長官が「敵基地攻撃」の必要性について発言するなど、日本を先制攻撃ができる国にする企図をあからさまにしました。これらは国際的に大きな批判を浴び、アジア諸国から警戒されました。


なぜあおるのか


 なぜ日本政府はこうなのか?


 第一に、軍事問題を現実的に把握する政治感覚がない。ロシアや中国から「何で騒ぐ」「ヒステリーでは」と笑われるほどでした。


 第二に、外交能力に欠ける。当事国は米国と北朝鮮です。日本政府が米国の友人を自認するなら「国家間の約束を果たして緊張緩和を」と提言すべきでした。


 第三は、国内の好戦的ナショナリズムに働きかけた、と考えられます。いま小泉改革のもとで、国民の大多数の生活が困難に陥っています。一部の金持ちが不正をして肥え太っていくのに、まともに働いても暮らしは苦しくなるばかり。慢性的な漠然とした不安にとらわれがちです。そこにつけ込んで、諸悪の根源は政治の失敗ではなく、他に原因があるかのように思わせたい。たとえばナチが共産主義とユダヤを敵にしたように、北朝鮮という敵を示したのです。好戦的ナショナリズムは、政府が国民生活を破壊しているときに発生する…これは第一次・二次大戦の教訓です。事実、次期総裁をねらう安倍氏の人気は数%上昇しました。党利党略どころか、個利個略というべきです。


恐怖ではなく対話を


 戦時体制国家では、人権や生活が弾圧されます。だから北朝鮮では人権抑圧が起きているのです。それを放置してきた国際社会には、共同の責任があります。国際社会が一致して、話し合いの路線を提示したのは意義があるのです。


 日本が憲法九条二項をもっていることも重要です。これがあるから日本は、米国といっしょに戦争することができません。通常ミサイルしか持たないイラクを、米国は米英軍事同盟をたてに先制攻撃しました。日米軍事同盟をそんなふうに利用させてはなりません。*


 さあ、みなさん、勇気を出して、政府首脳の振りまく、幼稚な恐怖感やミサイル小児病に惑わされないで、この夏、「九条を守ろう」と熱く語りかけようではありませんか。



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 一九五三年、東京生まれ。東京大学大学院教授。専門は近代文学。著書多数。平和関係の近著(編)に『心脳コントロール社会』(筑摩書房・ちくま新書)、『変成する思考――グローバル・ファシズムに抗して』(岩波書店)、『平和が生きるとき』(かもがわ出版)、『私の座標軸』(かもがわ出版)など。



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「北朝鮮脅威論に対抗するためには、事実と現実に即して恐怖の妄想を除くことが必要です。正確な情報を得るには、『北朝鮮を知るための51章』(明石書房・石坂浩一編著)が便利でわかりやすい」と小森さん

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by tk-waseikyo | 2006-08-09 15:51 | 注目記事